今年は晩秋を迎えて急に寒くなった印象だ。
山地で姿を消した
ウスタビガが平地で見られる頃になると、山地では
フユシャクの季節が始まる。
フユシャクは日本で35種が確認されており、その内、関東甲信エリアで
32種を確認している。
(残る3種の内、1種は20年以上発見されていない。他の2種は九州のみに棲息する。)
フユシャクの発生時期は、種によって晩秋から早春にかけて分散しており、それぞれの種が続々と出現しては短期間で姿を消すので、フユシャクの追っかけをしていると夏より忙しいくらいだ(笑)
発生場所も、標高1000m以上の高地にほぼ限られる種や、幼虫の食餌により特定の植生環境(例えばモミ林)にしか発生しない種など、狙う種によって、過去の実績も踏まえて、時期と場所を計画的に考える必要がある。もちろん天候や温度、月齢、風速も考慮する。強風や低温だと♀には会い難い。
フユシャクの成虫は摂食せず、短期間で交尾・産卵を終えて姿を消すので、種によっては1回の週末が悪天候で観察できないと、その年は1種を見逃す可能性すらある。
昨冬は、27種の♂に会えたが、28種目のシュゼンジフユシャクは2度も遠いポイントに通ったにもかかわらず玉砕だった。
灯火観察で出会いが期待できる♂ですら、上記の状況なので・・・
翅が無い♀との出会いは、桁違いに難しい。
これまでに♂に出会えた32種のうち、下記10種はまだ♀に出会えていなかった。
<フユシャク亜科>
ヤマウスバフユシャク、アカウスバフユシャク、フタスジフユシャク、シュゼンジフユシャク
<ナミシャク亜科>
ミヤマフユナミシャク、サザナミフユナミシャク
<エダシャク亜科>
ウスオビフユエダシャク、ナカジマフユエダシャク、フタマタフユエダシャク、ウスシモフリトゲエダシャク
さっそく今シーズンも、未見の某種の♀を狙おうと、
spaticaさんにも参戦をお願いして、
真神ゆさんと、氷点下4度の山中で、寒さに震えながら探索した結果・・・
狙っていた種とは違うが、フタスジフユシャクの交尾(つまり♀)に初めて遭遇した。
これで、未見♀が10種から9種に減った。
◆フタスジフユシャク♀(11月 長野)
シャクガ科フユシャク亜科Inurois属の♀は外見での同定は困難。
今回は交尾にて確認できて幸運だった。
◆フタスジフユシャク交尾(同上)
フタスジフユシャクは山地性のInurois属。
当初は
ウスバフユシャクの1タイプとされていたが、1974年に種として独立した。
神奈川でも丹沢山等に棲息し、特に珍しい種ではないが、山地性でかつ、発生時期が11月頃に限られるので、油断していると会えずにシーズンが終わる。
山地性の種の交尾は、灯火観察ではまず出会えないので幸運だった。
↑フタスジフユシャク♂
単体♂もちらほら飛んでいた。
→フユシャク図鑑
→ホームページ