一寸の虫にも五分の魂

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カバマダラ

神奈川県内のある場所で今夏から南方蝶のカバマダラが発生しているという情報を聞き遅ればせながら覗いてきた。

強風の中、確かに比較的新鮮な♂数頭が舞っており、離れたところで交尾も見られた。
近くのガガイモで幼虫や卵も見つかっている様だ。

かなりの数が発生したらしいが乱獲する者がいて激減したとか。
その為、現地では採集禁止の看板を掲げていた。
神奈川産に価値があるとは思えないのだが多数採ってどうするのだろう?

カバマダラは2010年に三浦半島や横須賀でも発生したが原因は不明だった様だ。
同年、浜松で発生したのは放蝶が原因だったと聞いている。
今回の発生原因はまだ不明の様だが、場所や増え方から人為的かもしれない。

2009年に東京付近に発生したクロマダラソテツシジミは冬を越せず姿を消した。
カバマダラは九州南部以南でしか越冬できないので、今回の個体群も神奈川の冬は越せないはず。
来年も続けて同地で発生する様なら連続放蝶が疑われる。

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◆カバマダラ♂ Danaus chrysippus (10月 神奈川)
本来は九州南部以南に生息するタテハチョウ科マダラチョウ亜科オオカバマダラ属の蝶。本州では迷蝶。
北米大陸を縦断する有名なオオカバマダラの同属。

幼虫はフウセントウワタ(毒成分アスクレピアディンを含む)等のガガイモ科を食餌とするいわゆる「毒蝶」で、鳥などに捕食され難いらしい。
吸蜜していたフジバカマも毒成分ピロリジジンアルカロイドを持つ植物。
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↑交尾(10月 神奈川)

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↑沖縄産♂(6月)
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↑石垣島産♀
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↑幼虫(石垣島)
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↑蛹(石垣島)

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◆ツマグロヒョウモン♀ Argyreus hyperbius (過去画像 神奈川)
温暖化の影響で近年関東でも普通種となった。タテハチョウ科ドクチョウ亜科。
♀のみ前翅端に黒白斑をもち、毒蝶であるカバマダラに擬態しているらしい。
日本のヒョウモン類の代表的な食餌であるスミレやワレモコウも毒性分(サポニン等)は含むのだが、わざわざカバマダラに擬態するということは、カバマダラの毒の方が天敵には有効(ないし有名?)ということなのだろうか。
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↑ツマグロヒョウモン♂
 ♀とは異種の様にルックスが異なる。産卵する♀だけ擬態して生存率を高める進化なのだろう。
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↑ツマグロヒョウモンの求愛
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↑ツマグロヒョウモン幼虫
 スミレ科食い。毒々しいルックスだが棘は固くはなく毒もない。

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↑ヒメアカタテハ Vanessa cardui
 タテハチョウ科タテハチョウ亜科。凡世界種。日本全土ただし越冬可能地は関東以南。
 この蝶もカバマダラにベイツ擬態しているといわれる。幼虫はキク科(ヨモギ等)喰い。
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↑誤ってヒメアカタテハに求愛するツマグロヒョウモンの♂
 同種の♂が間違えるくらいなので擬態は成功してるのだろう。


マダラチョウ亜科は飛翔力が強いことから海外からの迷蝶の飛来も多い。
定着・消滅を繰り返す種もいるので、定着の有無や定着地は変動し得るが、最近の日本定着種はカバマダラを含む7種。全種が毒草喰い。
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 ↑スジグロカバマダラ Salatura genutia 八重山諸島。
   食餌はガガイモ科(リュウキュウガシワ等)。
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 ↑アサギマダラ Parantica sita 日本縦断の渡りをするが越冬可能地は関東以南。
   食餌はガガイモ科(キジョラン等)。
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 ↑ヒメアサギマダラ Parantica aglea maghaba 八重山諸島。
   食餌はガガイモ科(ホウライカモメヅル等)。
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 ↑リュウキュウアサギマダラ Ideopsis similis 沖縄。
   食餌はガガイモ科(ホウライカモメヅル等)。
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 ↑オオゴマダラ Idea leuconoe 沖縄。
   食餌はキョウチクトウ科(ホウライカガミ等)、ガガイモ科(ホウライイケマ等)。
   那覇市と石垣市の「市の蝶」
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 ↑ツマムラサキマダラ Euploea mulciber 沖縄。食餌はクワ科(ガジュマル等)、キョウチクトウ科(キョウチクトウ等)。


マダラチョウ亜科以外にアゲハチョウ科にも有毒種がいて、それに擬態していると思われる種もいる。
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↑ジャコウアゲハ♂ Atrophaneura alcinous アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科。本州以南。
 幼虫の食餌はウマノスズクサ科(毒成分アルカロイド系を含む)。
 「月刊むし」(2009年8月号だったかな)にヒヨドリに捕まったものの解放されたジャコウアゲハ♂が見開きで載っていた。毒を体内にもつ戦略が有効であることが証明された例だが、擬態者にはどれくらい有効なのだろうか。
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↑ジャコウアゲハ♀
 ♂とは色が異なる。♀に擬態している種は知られていない。
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↑ジャコウアゲハ幼虫

ジャコウアゲハに擬態しているとされる代表的な種は以下の2種。
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 ↑オナガアゲハ Papilio macilentus アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科。北海道~九州。
         食餌はミカン科(コクサギ等)。
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 ↑アゲハモドキ Epicopeia hainesii アゲハモドキガ科。北海道~九州。
         食餌はミズキ科。ジャコウアゲハより二回りは小さい蛾。

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↑ベニモンアゲハ Pachiliopta aristrochiae アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科。沖縄。
 幼虫の食餌はウマノスズクサ科。この蝶もジャコウアゲハに近い毒蝶。
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↑ベニモンアゲハ幼虫

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 ↑シロオビアゲハ♀(ベニモン型)
  シロオビアゲハの♀の一部は上記の様なベニモン型となりベニモンアゲハに擬態しているとされる。
  ツマグロヒョウモン同様に産卵する♀を重視した進化なのだろう。
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 ↑シロオビアゲハ♂(右上)とベニモン型♀
  シロオビアゲハ♀の多数は♂同様のルックスであり、ベニモン型♀の割合は多くはない。
  Papilio polytes 北海道~九州。アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科。沖縄。食餌はミカン科。


他に原始的なアゲハチョウ科であるウスバアゲハ亜科も日本定着の全種が有毒種。

  ・ギフチョウ  Luehdorfia japonica ギフチョウ属。
         本州(新潟・神奈川以西)。食餌はウマノスズクサ科(カンアオイ属)。
  ・ヒメギフチョウ Luehdorfia puziloi ギフチョウ属。
         北海道~本州。食餌はウマノスズクサ科(ウスバサイシン等)。
  ・ホソオチョウ Sericinus montela ホソオチョウ属。
         大陸からの人為移入種。食餌はウマノスズクサ科。    
  ・ウスバシロチョウ(別名ウスバアゲハ) Parnassius citrinarius ウスバシロチョウ属。
         北海道~本州。食餌はケマンソウ科(ムラサキケマン等。毒成分プロトピンを含む)。
  ・ヒメウスバシロチョウ(別名ヒメウスバアゲハ) Parnassius stubbendorfii ウスバシロチョウ属。
         北海道。食餌はケマンソウ科(エゾエンゴサク等)。
  ・ウスバキチョウ(別名ウスバキアゲハ) Parnassius eversmanni ウスバシロチョウ属。
         北海道(大雪山系)。食餌はケマンソウ科(コマクサ)。



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by issun_no_mushi | 2013-10-14 15:57 | 鱗翅目・蝶