つい先日まで暑かったにもかかわらず、甲信の山地では氷点下の夜も始まり晩秋~初冬型のフユシャクが発生していた。
フユシャク(冬尺蛾)は地味なルックスのシャクガ科の蛾で、冬にのみ成虫が発生し、♀は翅が退化(進化?)した典型的な性的二型で、成虫は摂食せず、年1化の極めて興味深い存在。
成虫の発生時期が種によって異なり、数日しか成虫に出会える機会がない種もいる。
フユシャクの権威としては中島秀雄先生(著作「冬尺蛾」等)が著名。
日本では35種のフユシャクが知られており、種によっては生息域が局地的。
既に32種には会えたが、内6種は♀に会えていない。
未見3種の内、2種は九州固有種なのでまだ会う機会が無く、1種は20年以上未確認のレア種。
フユシャクは、生息ポイントと、時期(月日、時刻)、気候(天気、気温、湿度、月齢、風)等の条件さえ合えば、♂は(一部の種を除いて)普通の蛾と同様に灯火に来る可能性がある。
しかし♀は飛ばないので、主に氷点下の寒い夜に林等で懐中電灯を頼りにルッキングにて探すことになるが、♂に比べて遭遇率は桁違いに低い。種によっては野外で交尾は未確認とか。
平地種の♀を夜間に探す場合、人家の近くや公園だと不審者と間違えられて通報されたり、職質を受けることもある。
山地種の♀を夜間に探す場合、鹿はもちろん、熊との遭遇もあり得る。
極めてリスキーかつ報われない探索になる(笑)
加えて・・・
♂なら翅で同定ができるが、♀単体だと似たルックスの種(解剖して交尾器を調べないと同定困難)もいる為、
採集ではなく撮影目的の我々は、基本的に交尾している♀を狙うことになり、難易度は格段に跳ね上がる。
発見率向上とリスク回避の為、ここ数年はチーム神奈川の
真神ゆさん・
蛾LOVEさん・私や、埼玉メンバ(
川北さん、
ATSさん)でフユシャク探索を継続している。
私以外の各位はそれぞれ得意な分野で自然に対する造詣が深く、かつ、タフで情報管理能力と品位がある方々(と思っている:笑)。
◆ミヤマフユナミシャク♂(11月 長野)
本州中部の山地に、晩秋にのみ発生する。フユシャクのファーストランナーであり12月以降は見たことがない。また、甲信で標高1000m未満では見たことがない。幼虫はカラマツ等マツ科喰い。♀にはまだ出会えていない。
生息域は限定的だが平地にのみ生息するサザナミフユナミシャクに似ていると思う。サイズも近い。
↑サザナミフユナミシャク(2012 埼玉)
◆オオチャバネフユエダシャク♂(11月 長野)
北海道・本州中部・四国の山地に、晩秋にのみ発生する。個人的には12/1が最遅記録で、それ以降見たことはない。また、甲信地方で標高1000m未満では見たことがない。幼虫はマツ科喰い。チャバネフユエダシャクに似ている。
↑チャバネフユエダシャク♂(11月 長野)
オオチャバネフユエダシャクと同日に同じポイントで撮影。
チャバネフユエダシャクは山地~平地まで、晩秋~厳冬に発生する超普通種。
↑両種の♂の大きさ比較(2012 山梨)
旬が過ぎそうなアキナミシャク3種を列挙しておく。
フユシャクとは異なり、♀にも翅がある普通のシャクガ科。秋にだけ成虫が現れる年1化。
↑アキナミシャク(10月 山梨)
↑ミドリアキナミシャク(11月 山梨)
↑ナカオビアキナミシャク(11月 長野)
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