関東付近の
フユシャクの旬は、晩秋の山地から厳冬の平地に移って久しいが、1月末からの厳寒期は、
ウスバフユシャクの生き残りや、
クロテンフユシャク、
シロフフユエダシャク、
シモフリトゲエダシャク、
ヒロバフユエダシャクが主な顔ぶれとなりバラエティが少ない端境期。
暖かい年であれば、そろそろ初春型フユシャクのフライングも見られるが、今年の関東圏は記録的な大雪続きで、いつまでも消えそうもない残雪が保冷材になるので出現はやや遅れそうだ。
(今回の大雪は当地でも記憶にある限り最大の積雪量でした。被害を受けた方々に深くお見舞い申し上げます)
この機会に、普段は掲載を省略しがちな、鱗翅目以外の目を取り上げる。
フユシャクを探していると他の生物にも出会う機会はけっして少なくない。
◆ウバタマムシ Chalcophora japonica (2013/12月 埼玉)
タマムシ科ウバタマムシ亜科。本州以南に分布。年1化。成虫越冬する。食餌は松。
その美麗さから人気の高いヤマトタマムシに比べて地味な外見だが体長は同程度。
東京では絶滅危惧Ⅰ類。埼玉と神奈川では準絶滅危惧種。しかし、幼虫は穿孔性の為、松材の害虫としても有名。本種に限らないが、時々タマムシが柱や家具等から羽化した事例を聞く。
ヤマトタマムシ共々、本種も(少なくとも本州では)羽化まで2、3年かかるということだが、種や状況によって異なると思われる。
画像の個体は、
ATSさんのフィールドでフユシャク散策の際に出会った個体で、歳の瀬の寒い夜中に出歩いていた。越冬中に摂食活動とは思えないが、何をしていたのだろう。
↑初めて出会った越冬個体(2006/12 神奈川)
物陰に隠れていた。本種の成虫は冬の方が遭遇率が高い。
幼少の時分、家(神奈川)の狭い庭に長さ1mに満たない汚い古材が転がっていて、当時の飼い犬の見張り台だった(笑)
その古材から数年間、毎夏の様に本種が複数羽化していたのを今更の様に思い出す。
当時は、夏休みの自由研究(毎年ほぼ昆虫標本だった:笑)の為に1頭採集したくらいだったが、もっとよく観察しておくべきだったと悔やまれる。
↑(参考)ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima (2011 神奈川)
本州以南に分布。食餌はエノキ等。
一般にタマムシと言えばこのヤマトタマムシを指し、玉虫厨子の例を挙げるまでもなくその美しさは人気が高い。
ヤマトタマムシの他にも、オオゴマダラ蛹やニシキキンカメムシ、ゼフィルス♂等々、光沢系の昆虫は少なくない。Wikipediaにはヤマトタマムシの「金属光沢は鳥を寄せ付けない」との記載があるが・・・少々疑問に思っている。
↑ニシキキンカメムシ
↑オオゴマダラ蛹
↑ゼフィルス(画像はメスアカミドリシジミ♂)
↑ウラギンシジミ
これら光沢系は広葉樹の葉に止まっていると日光反射に紛れて意外と目立たない。
光沢系の戦略は、光の反射を計算に入れた高度な保護色なのではないだろうか。
ウバタマムシの食餌は松等なので、広葉樹の様な葉の反射は望めない上に、樹皮等で成虫越冬するので、光沢よりも樹皮擬態を選んだのは頷ける。
◆ワラジムシ Porcellio scaber (1月 神奈川)
種類は複数いるが、代表的なのはこのワラジムシ。
冬は冬眠するらしいが、この個体の様に時々カマドウマと同様に樹皮で活動しているのを見かける。
北海道・本州・四国に分布。意外にも九州以南には分布していないらしい。(九州の方、是非探してみて下さい)
主に枯葉等を食すことでミミズ同様に自然界のリサイクルに貢献しており、農作物などに害はないにもかかわらず・・・不本意にも「不快害虫」扱いされることが多い。
一方で、植物全般や農業・林業に大きな被害を生じている鹿は、増え過ぎているにもかかわらず、その外見ゆえに駆除され難い。
蝶は天然記念物になり易く、蛾やゴミムシは絶滅寸前の種であっても保護対象になり難いのと同様に、人間の偏った自然保護の方向性には不合理を感じることが少なくない。
ワラジムシはもちろん昆虫ではないが、旧分類の大顎亜門の印象から多足類(ムカデ、ヤスデ)と同格に思いがちだった。
改めてWikipediaで最新の分類を確認すると、節足動物門・甲殻亜門・軟甲綱・フクロエビ上目・ワラジムシ目(等脚目)・ワラジムシ亜目・ワラジムシ科。
甲殻亜門(いわゆる甲殻類)なので多足類よりエビ、カニに近い。
新分類の節足動物門は、絶滅した三葉虫形亜門を除けば下記4亜門で構成される様だ。
・鋏角亜門 :クモ、サソリ、カブトガニ、ウミグモ等
・多足亜門 :ムカデ、ヤスデ等
・甲殻亜門 :エビ、カニ、ミジンコ、フジツボ、ワラジムシ等
・六脚亜門 :昆虫、トビムシ等
↑(参考)オカダンゴムシ Armadillidium vulgare
オカダンゴムシもワラジムシ目・ワラジムシ亜目だが、ワラジムシ科とは異なるオカダンゴムシ科。
意外にも比較的歴史の浅い外来種であり、Wikipediaによると「非常食として利用できる」とか。
ダンゴムシやワラジムシに興味が湧いた方には
「ダンゴムシの本」がお薦め。
「日本ダンゴムシ協会」というサイトもある。
関東を今冬2度目の大雪が襲った2/14(バレンタインデー)に、
鳥羽水族館から、
5年間絶食中で有名になったダイオウグソクムシNo.1の死亡記事が報じられた。(リンクフリー確認済)
絶食の記録を更新する度に人気が高まり、博物館売店の実物大のヌイグルミは入荷即完売だったとか。
ダイオウグソクムシは西大西洋の深海に棲む体長約30cmの世界最大のワラジムシ目。
たしかに見た目もワラジムシに似ている。それなのに「不快害虫」とヌイグルミ完売の差はナニ?
↑ダイオウグソクムシのハーフサイズだが、日本近海には同属のオオグソクムシが生息している。
(撮影協力:
戸田造船郷土資料博物館・駿河湾深海生物館)
ナウシカのオームもワラジムシ目なのだろうか(笑) (リンクフリー確認済)
オームはもちろんダイオウグソクムシを家庭で飼育することは困難だが・・・
ワラジムシやオカダンゴムシは比較的容易かつコンパクトに飼育できるらしい。
どうせ飼育するなら国産のワラジムシやオカダンゴムシをいかがですか?
ミニ・オームやミニ・グソクムシと思えばとても魅力的でしょう。
<追伸>
第4回 - mozo mozo - 虫・蟲 展 始まりました。お時間ある方は是非覗いてみてはいかがでしょうか。
Gallery たまごの工房
東京都杉並区高円寺南3-60-6(JR高円寺駅南口徒歩4分)
Tel:03(3313)8829
2月18日(火)~3月2日(日)月曜休廊
12:00~19:30 最終日のみ~18:00
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