対馬のターゲットは、もちろん
ツシマウラボシシジミだったが、他の対馬固有種や迷虫にも会えればと願っていた。結局、迷蝶は見なかったが、迷蜻蛉はスナアカネに会えた。
また、固有種で狙っていたツシマカマキリモドキには会えなかったものの、ツシマシリアゲには会うことができた。
シリアゲムシは、シリアゲムシ目(長翅目)シリアゲムシ科(Panorpidae)の昆虫。
虫撮りをしていると普通に会えるが、お世辞にもメジャーとは言えない虫である。
♂が尾端を持ち上げていることが和名の由来で、英語ではサソリの尾に例えてスコーピオンフライと呼ぶらしい。
「生きている化石」といえばシーラカンス等が頭に浮かぶが・・・
完全変態(蛹を経て成虫になる)の昆虫においては、古生代ペルム紀の化石が見つかっているシリアゲムシこそ「生きている化石」と呼ぶに値する。系統樹的には鱗翅目(蝶・蛾)の先祖に当たるとも言える原始的な昆虫である。
昆虫の「生きている化石」と言えば、Meganeura(メガネウラ、メガニューラ)で有名なトンボや、ゴキブリも古生代から化石が出るが、いずれも蛹にはならないので彼等は不完全変態。
◆ツシマシリアゲ♀(9月 対馬)Panorpidae thushimaensis
日本では対馬特産種。長崎県の準絶滅危惧種。
画像の様な赤褐色個体(チャマダラシリアゲ)は同種の季節型らしい。
◆ヤマトシリアゲ♂(9月 神奈川) Panorpidae japonica
本州、四国、九州の普通種。
画像の様な赤褐色個体(ベッコウシリアゲ)はヤマトシリアゲの季節型らしい。
↑スズメバチの屍骸に集るヤマトシリアゲ(2012/6 広島)
↑クモの巣にかかった獲物を横取りするヤマトシリアゲ♂(2009/6 神奈川)
↑ヤマトシリアゲ交尾(2008/6 山梨)
↑ヤマトシリアゲ♀(2012/6 広島)
シリアゲムシ科はメジャーではない故か、一般の資料での掲載が少ない。
そもそも、日本の種数について、2属29種(1997年)という資料や、2属20種(2004年)という資料があってはっきりせず、その内訳の種名も明記されていない。
ネット上に
「日本産シリアゲムシ図鑑」という素晴しい先人のサイトがあったので、基本的な分類はそれを参考にさせて頂き、これまで会ったシリアゲを掲載する。
↑ツマグロシリアゲ♂ Panorpidae lewisi (2004/7 長野)
↑ミスジシリアゲ♀ Panorpa trizonata (2012/7 長野)
↑これもおそらくミスジシリアゲ♂ (2012/7 熊本)
↑マルバネシリアゲ♂ Panorpa nipponensis (2012/7 山梨)
↑プライアシリアゲ♂ Panorpidae pryeri (2007/7 長野)
↑ホソマダラシリアゲ♀ Panorpidae multifasciaria (2012/6 広島)
↑キアシシリアゲ♀ Panorpidae wormaldi (2003/4 東京)
↑ミヤケシリアゲ♀ Panorpidae tsunekakanis (2012/7 長野)
↑キシタトゲシリアゲ♂ Panorpidae fulvicaudaria (2009/4 神奈川)
↑ハクサンホシシリアゲ Panorpidae hakusanensis (2006/8 静岡)
また、同じシリアゲムシ目のシリアゲモドキ科(panorpodes)とガガンボモドキ科(Bittacus)も少ないながら紹介しておく。
↑シリアゲモドキ科スカシシリアゲモドキ交尾 Panorpodes paradoxa (2012/7 長野)
↑ガガンボモドキ科ガガンボモドキ Bittacus nipponicus (2009/7 神奈川)
前脚でぶら下がり、残りの脚を使って獲物を喰う。この獲物はザトウムシの様だ。
→ホームページ