山地性
フユシャクの♀や交尾に会うのは、リスキーかつ、平地種に比べ格段に難易度が高い。
それだけに出会えた時の喜びは平地種の比ではない。
今冬、生涯初めて交尾に会えた山地性フユシャクは、
ヤマウスバフユシャクの他に、ウスオビフユエダシャクがいる。
◆ウスオビフユエダシャク交尾(11月 山梨) Larerannis orthogrammaria
エダシャク亜科 Larerannis属 4種の内の1種。
分布は北海道、本州(東北、関東、中部)。関東付近では山地性で晩秋に発生。食餌はカバノキ科、ブナ科。
今冬初めて、山梨と長野で交尾と♀に会えた。
↑♀(同上)
Larerannis属の♀はどの種も天使の翼を連想する小さな2対の翅をもつが、後ろ側の長い方が前翅。
↑交尾(11月 長野)
真神ゆさん、
川北さんと雪や冷風の中、深夜まで探索して出会ったペア。
幸いクマには会わなかったが、キツネは間近にいた。
↑♂(同上)
個体差はあるものの、「ウスオビ」の和名が示す通り、Larerannis属4種の中では最も斑紋が薄い。
◆ナカジマフユエダシャク♂(11月 山梨) Larerannis nakajimai
エダシャク亜科 Larerannis属 4種の内の1種。
分布は本州(関東、中部、東海、近畿)、九州。関東付近では山地性で晩秋に発生。食餌はニレ科。
大雑把に、関東から西(南)は本種、東(北)はウスオビフユエダシャクが分布している。
ウスオビフユエダシャクと発生時期が重なり、混生地もあるらしいが、同一ポイントで見たことはない。
今年は発生が早目だった様で、上のウスオビフユエダシャク交尾と同じ日に♂の発生を確認した。
かつての和名は、シロフユエダシャク(白冬枝尺蛾)だったが、別種の
シロフフユエダシャク(白斑冬枝尺蛾)と紛らわしいことから改名された。
「ナカジマ」の由来はフユシャクの権威である中島秀雄先生。
↑♀(同上)
旧和名の示す通り白い部分の鱗粉は他種に比べて特に白っぽく感じる。夜に羽化すると一気に樹の高所に登っているらしく、野外では♀は未見。
今冬、
真神ゆさんが捕獲した個体を撮らせて頂いた。頭上数mの高所で交尾していて更に上昇中だったとか。
上記2種を含め、エダシャク亜科 Larerannis属4種全てがフユシャク。
4種とも大きさもルックスも似ているが、生息域や成虫の発生時期等が異なり興味深い。
残る2種は年が明けないと出てこないので、ここでは今年初めに会った画像を貼る。
↑
ヒロバフユエダシャク交尾、♂、♀(2月 埼玉)Larerannis miracula
ATSさんのフィールドにお邪魔して一緒に複数の交尾を確認した。
分布は本州、九州。関東付近ではLarerannis属唯一の平地種で、早春に発生する超普通種。食餌はバラ科、ブナ科など広食性。
♀は他種に比べて黒っぽい個体が多い。
↑
フタマタフユエダシャク♂(3月 長野)Larerannis filipjevi
ATSさんと遠征して複数の♂を確認した。
分布は北海道、本州(東北、関東、中部)。関東付近では山地性で早春に発生。広食性。
ツキノワグマの生息地らしいが・・・来春は♀探しをリベンジしてみたい。
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