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一寸の虫にも五分の魂

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キノカワガ・冬のキリガ等

冬に成虫に出会える鱗翅目と言えばフユシャクが代表的だが・・・
フユシャク以外でも初冬まで頑張る種や、成虫越冬する種、まだ寒い早春に羽化する種がいる。
一見、か弱そうな鱗翅目だが、実は他の目に比べて意外と寒さに強い様だ。

冬の鱗翅目観察と言えば、フユシャク探索や、キリガの糖蜜観察だが、観察時刻の旬が重なる種が多い為、私はフユシャクに注力し、他科は偶然の出会いに任せている。

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◆キノカワガ Blenina senex (上:12月 埼玉、下:11月 神奈川)
キノカワガ亜科はかつてヤガ科に属していたが最近コブガ科に変わった様だ。本州~沖縄諸島に分布し、年2化で成虫越冬する。食餌はカキノキ科等。
そこそこ大きな蛾だが、和名の通り樹皮にぴったり張り付いて、色彩が合えば擬態効果は高い。

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◆ホソバキリガ Anorthoa angustipennis (1月 神奈川)
ヤガ科ヨトウガ亜科。北海道~九州に分布。年1化。成虫は早春に現れる、いわゆる春キリガ。食餌はバラ科、モクセイ科。
2月から見ることが多い種で、1月に会ったのは初めてかもしれない。湘南の暖かさと標高の低さゆえと思う。
フユシャク等は標高の高い山地や緯度の高い北側から出現が始まるが、春の虫はその逆で、梅や桜前線と同様に、緯度の低い南部や標高の低い低地から出現する。

生物の分類は研究が進むにつれて見直されるが、蛾の分類は学研の日本産蛾類標準図鑑でかなり変わった印象がある。
キリガとつく種は新設のキリガ亜科だけでなくヨトウガ亜科にもいる一方、ヨトウとつく種はヨトウガ亜科はもちろんキリガ亜科にもいる。
かつて、草本を食餌とする種をヨトウガ、樹木を食餌とする種をキリガと大雑把な区別を聞いた記憶があるが、イチゴもソメイヨシノもバラ科だし、植物を草本・樹木と分けること自体厳しい。
今後、新種を命名することがあったら、ヨトウガ・キリガの区別は何を基準にするのだろう?

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↑ウスズミカレハ Poecilocampa tamanukii (11月 山梨)
カレハガ科のアンカー。北海道~九州に分布し、年1化で晩秋の高地で見かける。食餌はバラ科、カバノキ科。
スミナガシといい、本種といい、味のある和名命名センスに唸るしかない。

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↑ミドリハガタヨトウ Meganephria extensa (上:11月上旬 長野高地、下:11月末 神奈川平地の擬態効果ぶり)
ヤガ科モクメキリガ亜科。かつてはモクメヤガ亜科だったが亜科名自体が改名された様だ。
北海道・本州・九州に分布。本当に四国にいないのだろうか?四国の方、是非探してみてはいかがでしょう?(笑)
成虫は年1化で晩秋に現れるが成虫越冬しない。食餌はニレ科。
和名にミドリと付くが、そう感じる個体に会ったことがないので、いつも出会うと和名が思い出せない(笑)

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↑ケンモンミドリキリガ Daseochaeta viridis
ヤガ科モクメキリガ亜科。北海道~九州に分布。年1化で晩秋に現れるが成虫越冬しない。食餌はカエデ科、バラ科。
「蛾は色が汚い」等という声も聴くが、本種の様に一般受けしそうな色彩の蛾は少なくない。
春に出るゴマケンモン(下)に似ている。

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↑(参考)ゴマケンモン Moma alpium 
ケンモンミドリキリガ(上)に似ているが、別亜科のヤガ科ケンモンヤガ亜科。
北海道~九州に分布。春から初夏に現れる。食餌はブナ科、カバノキ科。

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↑ウスアオキリガ Lithophane venusta (10月 山梨)
この種も上2種に雰囲気が似るているがややスマートで、別亜科のヤガ科キリガ亜科。
北海道~九州に分布し、秋に現れ成虫越冬する。食餌はブナ科。

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↑アオバハガタヨトウ Antivaleria viridimacula (11月 山梨)
ヤガ科キリガ亜科。北海道~九州に分布。年1化で晩秋に現れるが成虫越冬しない。食餌はバラ科、ブナ科。
色彩や斑紋に個体差が多い。和名は「青翅刃形」と思われ、緑系が多く、前翅外縁がギザギザしている。

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↑キトガリキリガ Telorta edentata (12月 埼玉)
ヤガ科キリガ亜科。北海道・本州・九州に分布。これも四国にいないのだろうか?
年1化で晩秋に現れるが成虫越冬しない。食餌はバラ科。
和名の「キトガリ」は黄色で翅端が尖っているという意味と思う。

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↑ノコメトガリキリガ Telorta divergens (12月 埼玉)
ヤガ科キリガ亜科。北海道~九州に分布。年1化で晩秋に現れるが成虫越冬しない。食餌はツバキ科、バラ科。
「ノコメ」は「鋸目」つまり、前翅外縁のギザギザをノコギリに例えたものと思う。

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↑ゴマダラキリガ Conistra castaneofasciata (11月 長野)
ヤガ科キリガ亜科。北海道~九州に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はブナ科。
和名の「ゴマダラ」は「碁斑」の意味と思う。

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↑カシワオビキリガ Conistra ardescens (12月 埼玉)
ヤガ科キリガ亜科。本州~九州に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はブナ科、バラ科。

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↑ホシオビキリガ Conistra albipuncta (1月 神奈川)
ヤガ科キリガ亜科。北海道~九州に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はバラ科。
前翅の斑紋は碁斑型など複数ある。和名の「ホシ」の由来と思われる黒点は白いものもいる。

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↑フサヒゲオビキリガ Agrochola evelina (12月 埼玉)
ヤガ科キリガ亜科。北海道・本州・四国に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はブナ科、バラ科。

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↑ヨスジノコメキリガ Eupsilia quadrilinea (1月 神奈川)
ヤガ科キリガ亜科。本州~九州に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はバラ科、ブナ科、ニレ科。

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↑チャマダラキリガ Rhynchaglaea scitula (上:1月 神奈川、下:12月 埼玉)
ヤガ科キリガ亜科。本州~沖縄諸島に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。
斑紋は多様。超普通種だがいまだに食餌は未知だという。

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↑クロチャマダラキリガ Rhynchaglaea fuscipennis (1月 神奈川)
ヤガ科キリガ亜科。本州・四国・九州に分布。年1化で晩秋に現れ成虫越冬する。食餌はブナ科。

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↑フクラスズメ Arcte coerula (12月 埼玉)
ヤガ科ウスベリケンモン亜科。かつてはシタバガ亜科だった。
北海道~沖縄諸島に分布。年2化で成虫越冬する。食餌はイラクサ科、アジサイ科、クワ科。

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↑(参考)幼虫はカラムシ等でよく見かける。


和名は味のあるものが多いが、その由来の解釈が謎なものもある。和名の由来等は公的に記録しているのだろうか。
もしまだなら、命名者や識者の情報が失われない内に記録すべきだろう。


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by issun_no_mushi | 2014-02-11 14:08 | 鱗翅目・蛾